こんにちは。GMOグローバルEC株式会社の横川です。
Digital Commerce 360が2026年8月13日に公開した記事では、オンライン小売事業者が今年のホリデーシーズンに向けて進めている準備として、大きく3つの動きを紹介しています。
参考:Ecommerce Trends: 3 ways online retailers are preparing for the 2026 holiday season
ひとつは、ホリデー商戦そのものの前倒し。
もうひとつは、ChatGPTやPerplexityなどのAIを経由してECサイトへ訪れる消費者への対応。
そして三つ目が、在庫や配送情報をより分かりやすく見せる取り組みです。
中でも、越境ECに関わる事業者にとって注目したいのが「AI経由の流入」です。
■「検索して買う」から「AIに相談して買う」へ
これまでインターネットで商品を探す場合、
Googleなどで検索する
↓
検索結果からECサイトを探す
↓
商品を比較する
↓
購入する
という流れが一般的でした。ところが最近では、
ChatGPTなどのAIに相談する
↓
AIが条件に合う商品を探す
↓
いくつかの商品やECサイトを提案する
↓
その中から購入する
という流れが現実になり始めています。
記事では、家具EC事業者Povisonの例として、現在すでにWebサイト流入の約5%がAI関連となっており、今後さらに増える可能性があると紹介されています。
少し前まで「AIに商品を選ばれる時代」という話は、やや未来の話に聞こえていました。しかし現在は、実際にAIからECサイトへ顧客が送られてくるところまで進んでいます。
■AIに見つけてもらえない商品は存在しないのと同じ?
ここで重要になるのが、商品情報の作り方です。
人間であれば、きれいな写真やキャッチコピーを見て、
「なんとなく良さそう」
「高級そう」
「自分に合いそう」
と判断できます。一方、AIが商品を探す場合には、それだけでは不十分です。
商品名
用途
素材
サイズ
対象者
特徴
価格
在庫
配送条件
使用方法
注意事項
などの商品情報が、できるだけ明確に整理されている必要があります。
つまりECサイトは、これまでのように「人間に分かりやすいページ」であるだけでなく、「AIにも内容を理解しやすいページ」にしていく必要があります。私たちはこれまで、こうした考え方を「AI可読性」として紹介してきました。2026年になり、この考え方が単なるSEO対策の延長ではなく、実際の販売経路に関わる問題になってきたと言えます。
■これは越境ECにとってむしろチャンス
AI経由の買い物は、越境ECとの相性が非常に良いと考えられます。従来の海外販売には、「言葉の壁」がありました。日本企業の商品ページが日本語だけで作られていれば、海外の消費者が直接商品を見つけることは簡単ではありません。しかしAIを経由する場合、消費者自身が日本語の商品ページを読む必要がないケースも増えてきます。
例えば海外の消費者が、「日本製で、天然素材を使った高品質な商品を探している」とAIに相談したとします。
AIが商品情報を正しく理解できれば、日本の小規模メーカーの商品であっても候補に入る可能性があります。
つまり、これからの越境ECでは、
英語が上手かどうか
広告予算が大きいかどうか
だけではなく、「商品情報がどれだけ整理されているか」が競争力になる可能性があります。
これは中小企業にとっても興味深い変化です。
■「在庫があります」だけでは足りない
今回の記事でもうひとつ重要なのが、在庫情報の可視化です。
米国の小売事業者では、ECサイト上で近隣店舗の在庫を確認できる仕組みを導入する企業が増えています。
実店舗を持つ企業であれば、
近くの店舗に在庫がある
今日受け取れる
店舗から配送できる
といった情報が、購入判断に大きく影響します。
もちろん、日本から海外へ商品を発送する越境ECの場合、海外に店舗がない企業も多いでしょう。
しかし、この考え方はそのまま応用できます。
例えば、
日本国内在庫あり
通常○営業日以内発送
米国まで約○~○日
関税・VAT込み
関税は購入者負担
海外倉庫在庫あり
といった情報です。消費者が知りたいのは単に「在庫があるか」ではありません。
「いつ届くのか」
「最終的にいくら払うのか」
「ちゃんと届くのか」
というところまで含めた安心感です。
■2026年のECは「安さ」だけの競争ではない
先日のDigital Commerce 360の記事では、2026年のホリデー商戦について、消費者が価格だけでなく、配送、返品、利便性、信頼性などを重視していることが紹介されていました。今回の記事は、その反対側にいる「販売者が何を準備しているのか」を紹介したものとも言えます。
消費者側では、
価格
配送
返品
利便性
信頼性
が重視される。販売者側では、
早期準備
AI流入への対応
在庫情報の可視化
配送情報の明確化
が進む。そして、その間にAIが入り始めています。つまり、今後のECは、
消費者
↓
AI
↓
ECサイト
という新しい導線を前提に考える必要が出てきます。
■「AIに選ばれる」だけでも足りない
ただし、AIに商品を見つけてもらえれば、それで終わりではありません。AIが商品を紹介してECサイトへ顧客を送ってくれたとしても、
送料が分からない
納期が分からない
関税が分からない
返品条件が分からない
商品説明が曖昧
では、購入にはつながりません。これから求められるECサイトは、
AIに発見される
↓
AIに内容を理解してもらう
↓
消費者がECサイトを訪れる
↓
安心して購入できる
という一連の流れを作る必要があります。SEOだけを考えていた時代から、少しずつ状況が変わってきました。
これからは、「Googleに見つけてもらうECサイト」だけでなく、「AIに理解され、AIから顧客を紹介してもらえるECサイト」を作ることが重要になっていきそうです。
特に越境ECでは、この変化が日本の中小企業にとって新しいチャンスになる可能性があります。広告費や知名度だけで競争するのではなく、商品そのものの価値と、その価値をAIが理解できる形で整理して伝える。2026年のホリデー商戦は、その新しいECの形が本格的に見え始めるタイミングなのかもしれません。


































