jGrab

越境ECブログ

トランプ関税と越境EC(ガンガン追記あり)

photograph by Babooo0

こんにちは。ジェイグラブの横川です。

昨日、日本でも大きく報道されました、アメリカのトランプ大統領が発表した関税についてです。


4月21日から5月2日の間にアメリカ行きの荷物の発送に関するルールが複雑化しますので、こちらで確認してください。
参考:今週から越境EC発送について大幅ルール変更(アメリカ行き荷物の場合)

マスメディア各社の記事や解説を読んでも非常に分かりづらく、長文ですが一番わかりやすかったのは日経とNHKでした。
参考:トランプ大統領 相互関税日本に24% 一律10%関税【一覧表も】 (NHK)

この記事をものすごく簡単にまとめると、

  1. アメリカは産業の空洞化と貿易赤字を国家の緊急事態と解釈し、その是正のために関税率や非関税障壁を踏まえ、アメリカを極端に不利な状況に追い込んでいる国には「相互関税」を個別に課し、それ以外の国や地域には一律10%を課す。相手国が報復措置を取れば、さらなる追加関税を課す。
  2. 日本はアメリカからの輸入品に46%の関税を課してきたとされ(意味不明)、対抗的に日本からアメリカへの輸出品には24%の追加関税を課す。
  3. すでに関税が課されている鉄鋼製品とアルミニウム、自動車や自動車部品などには、上記の24%は上乗せしない。

ということになっています。つまり、日本だけに限って言えば、「とにかく従来の関税に24%プラス、車関係は従来の関税に25%プラス。以上。」という話です(簡単に言えば、相互関税10%、追加関税14%で、合計で、日本がアメリカに課している(と向こうが勝手に言っている)46%の約半分の24%だと理解すればわかりやすいです)。

ただ、ここまでの話は、タンカーなどで輸送される、主に商社などの大口の貿易が念頭に置かれています。こうした貿易での関税は輸入者が支払うのが義務ですので、輸出側の負担が大きくなるわけではありませんが、輸入国での原価が膨れ上がるので、最終消費者が支払う商品代金が高くなり、消費の冷え込みは可能性として高まります。

越境ECでも、BtoBやアマゾンのFBAで在庫を送っている場合は、上記の貿易になるので、該当する可能性が高まります。なお、BtoCの荷物でも量が多いとBtoBと判断される可能性はあります。これは通関士の判断次第なので明確な基準はありません。

では、日本から海外の購入者に送る小口輸送ではどう解釈したら良いのか。ここで関係してくる「デ・ミニミス」に触れている国内メディアが見つからず、ここが次の疑問です。

小口(あるいは低価格)品の場合、De Minimis Threshold(デ・ミニミス・スレッシュホールド)というものがあります。この一般にデ・ミニミス・ルールと呼ばれるものは、低価値(低価格)の輸入品には一定のしきい値以下であれば関税を課税しないというルールのことです。
ちなみに、日本の場合は海外からの個人輸入などで、日本円で1万円相当以下の商品は無税で通関します。
(参考:De Minimis Thresholds by Global Express Association (英語))

アメリカは、それが米国関税法321条の規定により、800米ドルまでの輸入品に関しては関税が発生しないということになっています。
しかし、例外もあり、米国通商法201条、232条、301条に当てはまる物品や国または地域からの輸入品には適用されません。

201条に当てはまる代表的なものは、太陽光パネルや洗濯機などがあります。
232条は、最近運用され、上述の鉄鋼やアルミニウムが対象になっています。
301条は、中国(香港含む)に対して適用されています(中国・香港からの輸入品はデ・ミニミスの恩恵を受けない。これでTemuやShein潰しができると米国は考えているようです)。301条は日米貿易摩擦が激しかったときによくでてきた条項です。ちなみに今回、東南アジア諸国の相互関税が高いのは、中国製品の迂回輸出も想定しているとの話もあります。
参考:Let’s Talk Tariffs: Major U.S. Section 321 De Minimis Changes (March 2025) (英語)

下記の表は2024年までのデ・ミニミス・ルールと、2025年の新ルールの比較です。

by easyship

Value Threshold(価値しきい値)のところには、「依然として、201条、232条、301条に当てはまる物品や中国(香港含む)からの物以外のほとんどのものは800米ドル未満であれば無税」と書いてありますので、引き続きデ・ミニミス・ルール自体は生きています。

ただし、5月2日からは、日本から発送されるものでも、中国・香港製だとデ・ミニミスの対象外になります(関税がかかる)。原産地をインボイスに記載するようになるとも発表されてますので、商品の生産国に注意が必要です。
なお、国際クーリエ(FedExなどの民間国際輸送業者)ではなく、国際郵便で送る場合はこの条件に当てはまらないとのことですが、ニューヨーク・タイムズの記事によると、

米国郵政公社(USPS)については、独自の国際ネットワークを持たず、他国の郵便局から荷物を受け取っているという特殊性があるため、今回の命令では特例が設けられている。

(中国・香港から)郵便で届く荷物には、商品価値の30%、または25ドル(6月には50ドル)のいずれか高い方の料金が課される。
参考:Trump’s De Minimis Order Poised to Upend E-Commerce (英語・有料)

と記載されています。

関税が発生した場合の実際の負担者は、貿易(BtoB)の場合は前述の通り、法によって輸入者側の負担になりますが、BtoCの場合は、郵便で送った場合は購入者負担、国際クーリエで発送する場合は販売者、購入者のどちらかで選択できます。

結局、結論としては、越境ECの小口発送の場合、デ・ミニミスの恩恵は受けられる。ただし、商品の生産国が中国・香港製だと、デ・ミニミスは適用されない。なお、日本郵便で送る場合も中国・香港発でなければ今まで通り(5月2日からは中国・香港発の荷物についてはデ・ミニミス非適用)。

と、いうことになります。したがって、アメリカへ

  • 約117,000円以上の高額品の発送(この記事を書いた4月4日時点のレートの場合)。
  • ガジェット系に多い、メイド・イン・チャイナ製品(完成品)を売る。
  • ネットで注文を受けて、商品は中国から発送させる(中国&香港からの発送物)。
  • BtoB、アマゾンのFBA利用で在庫を送る(貿易と判断された場合)

というパターンはほぼ確実に関税がかかるだろうと思います。ただし、商品を構成するパーツや原料の一部が中国産だという場合、中国製の使用されている割合によっては関税発生などというレベルまで話が進むなんてこともあるかもしれません(このあたりは未確定です。おそらくそこまではしないと思いますが)。

そういうわけで、一部は影響する可能性がありますが、おそらくは越境ECに関しては、いわゆるトランプ関税の影響は直接的には軽微ではないかと今のところは言えると思います。
ただし、冒頭に書いたように、BtoB貿易でアメリカに輸出される生活必需品の値上がりが起きてアメリカ人の消費マインドが冷え込めば、その影響は受ける可能性はあります(間接的に影響を受ける可能性はある)。


最後に、このブログは、私見を含む、完全に正確な内容ではない可能性がありますし、昨今のアメリカはコロコロ主張を変えるので、この内容が合わなくなる可能性があります。これを信じて不利益を被ってもこちらは責任を負わないということをご理解ください。

行き当たりばったり感のアメリカからの情報ですが、何かあればここに追記していきます。4月13~14日に発表のあった、「スマホやPCは関税除外する」⇒「いや、そんなこと言ってない。別の関税を課す」などの話題は、あまり日本企業には影響しませんので、今後も混乱しないように、日本企業の越境ECに関わりそうな内容だけ追記していきます。

※2025年4月10日午前3時25分現在
(予想した通り、コロコロとまぁ・・・)トランプ大統領は自身のSNSで対抗措置を取らなかった約70カ国(地域)については、相互関税を90日間停止し、冒頭に書いた項目1の10%にすると投稿しました。これから個別交渉を各国とやるようですから、そのうち自分たちが何を言ったか、何をやっているか混乱してぐちゃぐちゃになりそう・・・。
参考:Trump announces 90-day pause on new tariffs and raises China tariffs | BBC News

※2025年4月10日午後19時追記
トランプ大統領が90日間の猶予を設けた背景としては、米国債の急落だと言われています。しかし、ネタとして、トランプ大統領が散々バカにしてきたアフリカのレソトが、彼のお気に入りのゴルフウェアの生産国で、そこに高関税をかけていたことに気づいたからというネタの方を推したいですw。
参考:Lesotho produced Trump’s golf shirts – pity about those tariffs

※2025年4月15日午後20時追記
デ・ミニミスの廃止は中国+香港については決定していますが、大統領令には「商務長官が『適切な関税徴収体制が整った』と報告するまで、段階的に進められる」とあり、最終的には「すべての国を対象にこの制度を廃止」することを視野に入れているようで、多くの国、企業にとって寝耳に水状態ということです。実際、日本がいつ適用されるかは未定ですし、いつものごとくしれっと広げた風呂敷がなかったことになっている可能性もありますので、冷静にウォッチしましょう。
参考:US to end de minimis, air cargo set for ‘seismic shock’

※2025年4月21日午前10時追記
今週から5月2日にかけてアメリカへの商品の発送のルールが厳格化します。詳細は4月21日午前10時にアップした「今週から越境EC発送について大幅ルール変更」を参照してください。

※2025年4月28日午後12時追記
昨年から予想されていたことですが、アメリカの関税率が上昇、または、デ・ミニミス撤廃が起きると、アメリカに向かっていた荷物が他の地域に殺到するようになり、その地の税関がパンクするため、連鎖的にデ・ミニミス廃止などの動きが起きると言われていましたが、現実になりつつあります。今回はイギリスが検討し始めたという話ですが、EUでも昨年から議会に議題としては上がっています。
参考:【英国】英、低額輸入品に課税検討 大量流入阻止=小売業者は歓迎
EUが150ユーロ未満の関税免除撤廃!越境EC販売事業者に迫る課題と対策

※2025年4月30日午後20時30分追記
トランプ関税上乗せ前に駆け込み購入 アメリカ人観光客「日本にいる間に買わなきゃ」(テレビ朝日)
こういうニュースが出ていますが、インタビューに答えている人たちの購入額は数千円から数万円です。これは普通にECで購入しても関税はかかりません(中国・香港原産品でなければ)。関税で何でもかんでも物価が上がると短絡的に考える人が大量にいることがわかります(こうした心理的な問題の影響で不景気になって行っちゃいそうです・・・)。さすがアメリカ人、何もわかってない。みなさん、デ・ミニミス・ルールがあることを誰もご存じないようなのが丸わかりです。きちんとサイト上でアピールしていきましょう。

※2025年5月13日午前4時追記
米中双方の話し合いにより、お互いにかけていた関税がすこしゆるくなりました。
米国はまず、中国だけでなく日本などにも課している基本の10%の他に、相互関税24%を乗せ、中国が報復してきたのでさらに91%乗せて145%としてきました。この内、91%は廃止、24%は90日間停止しました。
中国は米国からふっかけられた関税に対抗して米国から届く荷物に対して125%の関税をかけていましたが、そのうちの91%は廃止、24%は米国と歩長を合わせて90日間停止としました。
これで、中国産品の米国への輸出には30%の関税ということになりましたが、90日間に米中が決裂や不合意などがあれば、停止中の24%が復活し、54%になります。
中国から郵便で送られる800ドル以下の荷物については、荷物の価値の120%、もしくは1個当たり100ドル(6月以降は200ドル)が課税
としていたものが、

・民間配送業者が扱う中国からの小口輸入品への関税は145%から30%に引き下げ
・中国からの郵送物で800ドル以下のものは中国からの小口輸入品に対する関税を120%から54%に引き下げ、一律100ドルの最低関税は維持

になっています。

Writer 横川 広幸

横川 広幸 取締役 越境ECコンサルタント eBayJAPAN創業時に法人営業、マーケティングに従事。eBayに連携した越境ECサイト “Tokyotrad” で日本の仏具を世界86カ国に販売。自らの越境EC成功体験を越境ECアドバイザーとして日本全国でセミナー講演や個別相談を行う。

SEARCH

CATEGORIES

MOST READ

ARCHIVE

海外販売について、まずはご相談ください

海外販売の開始・物流・自治体支援・EC出店・構築など、状況に応じて最適な提案をご案内します。