こんにちは。GMOグローバルEC株式会社の横川です。
2026年7月1日から、EUでは150ユーロ以下の輸入品に対しても、新たに1品目(HS分類ごと)につき3ユーロの関税が課される制度が始まりました。
参考:EU、デ・ミニミス終了前倒し。少額でも3ユーロ課税
一見すると「また関税が増えた」というニュースですが、実際に欧州で問題になっているのは、関税そのものではありません。問題視されているのは、「購入者が予想していなかった追加請求」です。
参考:EU urged to act against unexpected duty charges on e-commerce parcels
例えば、
・購入時には表示されていなかった
・決済後や商品到着時に突然請求された
・配送会社から立替手数料まで含めて請求された
このようなケースが発生し、欧州の消費者団体は欧州委員会へ改善を求めています。
ここで興味深いのは、EUの考え方です。EUは「販売価格に必ず関税を上乗せしなさい」とは言っていません。一方で、「購入者が最後になって驚くような請求は望ましくない」という姿勢を明確にしています。
つまり重要なのは、「どう徴収するか」ではなく、「購入前に最終的な支払額が分かること」なのです。
実際、大手ECプラットフォームの対応を見ると、その考え方がよく分かります。
Temuは購入時に関税込みで表示し、AliExpressは概算を表示、Sheinは価格へ吸収する形を採っています。
eBayも、eBay International Shipping(EIS)やEU向けのSpeedPAKでは、購入時に費用が分かる、あるいはDDP(関税込み配送)の仕組みを採用しています。
もちろん通常配送では配送会社によって運用が異なる場合もありますが、少なくとも「配達時に突然請求される状況」を減らそうという方向へ進んでいます。
ここで思い出したのが、アメリカの関税制度変更時です。
当時はFedExなどの配送会社から、関税分を販売価格へ反映するよう促す案内が出されました。背景には、配送会社が配達時に関税を回収する負担を減らしたいという事情もありました。
一方、EUは少し考え方が異なります。
価格へ上乗せするか、チェックアウト時に徴収するか、DDPで販売者が負担するかは事業者に任せつつ、「購入前に最終的な支払額を分かるようにすること」を重視しています。
つまり、アメリカは「価格へ反映すること」を重視し、
EUは「価格を分かりやすく伝えること」を重視していると言えるでしょう。
さらに、この制度にはもう一つ見逃せないポイントがあります。以前もお伝えした通り、今回の3ユーロは「荷物1個あたり」ではありません。
HS分類(関税分類)ごとに課されます。
例えば、同じTシャツを5枚購入しても、同じHS分類であれば3ユーロです。しかし、
・テーブルクロス(繊維製品)
・コーヒーカップ(陶器)
・まな板(木製製品)
のように異なるHS分類の商品を一緒に購入すると、それぞれに3ユーロが課されるため、関税負担が大きくなる可能性があります。これは、越境ECの商品企画にも影響を与えるかもしれません。
これまでセット販売といえば、
「客単価を上げるために、異なる商品を組み合わせる」という考え方が一般的でした。
しかしEU向けでは、「異なる商品を組み合わせるほどHS分類が増え、関税負担も増える」というケースが考えられます。
逆に、同じカテゴリーの商品でセットを構成した方が、購入者にとって総支払額を抑えられる可能性もあります。
そして、この変化はAI時代とも深く関係しています。購入支援AIは、商品価格だけでなく、
・送料
・関税
・税金
・手数料
まで含めた「最終支払額」で比較するようになるでしょう。そうなると、
「見栄えの良いセット商品」よりも、「関税まで考慮した総支払額が安い商品」をAIが推薦する可能性があります。
つまり、これからは商品企画の段階から、HS分類まで意識した設計が競争力になるかもしれません。これまで何度もお伝えしてきたように、AIは曖昧な情報よりも、構造化され、整理された情報を好みます。それは商品情報だけではありません。価格情報も、関税情報も同じです。
「あとから追加で請求されるかもしれない」というECサイトよりも、「この金額ですべて完結します」と明確に示しているECサイトの方が、人にもAIにも信頼されやすくなるでしょう。AIに選ばれるECサイトとは、商品説明が優れているサイトだけではありません。最後まで安心して購入できる価格設計と、AIにも理解しやすい商品設計まで考えられたECサイトになります。
EUの3ユーロ関税は小さな制度変更に見えますが、その本質は「価格の透明性」と「商品設計」が、これからの越境ECの競争力になることを示した出来事なのかもしれません。




































