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ジェトロ「JAPAN STORE」分析:日本企業が海外Amazonで伸びる構造と見落としがちなリスク

越境ECでAmazon(アマゾン)に挑戦する日本企業にとって、「どの国のどのマーケットプレイスにどう攻めるか」は、これまで以上に戦略性が問われるテーマになっています。​
今回は、米英Amazonの出品実態を整理したJETROの最新レポートと、Amazonの世界的な強さ、そして英国VAT・関税のポイントを組み合わせて、実務に役立つ視点で整理します。

なぜ今「Amazonで越境EC」なのか?

JETROのレポートから、Amazonは北米・中南米・欧州など18カ国で展開し、35カ国で利用可能な、越境ECで最も扱いやすいグローバルプラットフォームの1つとされています。​

2023〜2024年度のJAPAN STORE参加企業の分析からも、日本企業の多くが「まずは米国Amazon」から挑戦し、次のステップとして英国を含む欧州に広げるパターンが見えてきます。​2025年時点の世界のECトラフィックをみると、Amazon関連ドメインは、トップ20サイトの合計アクセスの約43%を占める規模に達しています。​

中でもAmazon.com単体で月間約27億アクセスと、トップ20全体の約4分の1を集めており、amazon.co.jp や amazon.co.uk、amazon.de など各国サイトも上位に並ぶなど、Amazonエコシステム全体がグローバル集客の中心になっていることが分かります。​

出典:Visual Capitalist

JAPAN STORE企業が直面する3つのステージ

JETROがJAPAN STORE参加企業を調査したところ、Amazon越境ECの課題は大きく「出品」「最初の売上創出」「売上拡大」の3段階で変化していました。​出品フェーズでは物流や予算、法規制対応が、売上創出段階では認知度やアクセス数の確保が、そして売上拡大フェーズではSEOや広告運用、各国の規制・関税対応、Amazon側のテクニカルな問題への対応などが課題として浮かび上がっています。​

出品準備:米国3割・英国7割が「未出品」の現実

実は、JAPAN STORE参加企業のうち“米国で3割・英国では7割”がまだ出品に至っていません。原因の大半は「商品準備の遅れ」です。

・ラベル対応
・英語の訴求文
・写真の撮り直し
・規制に合った商品選定

このあたりが地味に時間を奪う、最初の壁になっています。

出典:JETRO
出典:JETRO

FBA活用と物流・予算の考え方

Amazon越境ECの配送方法としては、注文ごとに日本から発送する「自社出荷」と、現地Amazon倉庫に事前納品して配送を任せる「FBA」があります。​
FBA利用商品は配送の速さから検索順位が上がりやすい仕組みがある一方、保管・配送コストもかかるため、JETROの調査でも米国向け予算の中で「配送・物流」と「広告費」が大きな比重を占め、長期視点での予算確保が重要だとされています。

米国Amazon販売で予算投下(予定)額が高い項目(上位3項目を回答)/出典:JETRO

市場調査と商品選定:日本での売れ筋=米国・英国で売れるとは限らない

売上上位企業ほど、事前に市場調査を行い、競合商品のレビュー分析や自社商品との比較、販売数量・損益分岐点のシミュレーションを行っている比率が高いことも示されています。​
商品選定では、「現地消費者ニーズがある商品」を重視する企業ほど売上上位に入り、「日本国内で売れている商品」優先の企業は伸び悩む傾向があり、日本のヒット商品をそのまま持ち込むのではなく、現地ニーズ起点でラインナップを組み替える視点が重要です。

出品後:ツール活用と「見せ方」で差が出る

私も常々クライアントにお話ししているのが、「出品は越境EC販売の最初のステップで、ゴールではない」ということです。これはAmazonに限らず、あらゆるECサイト・ECモールに言えることで、出品しているだけでは売れません。JETROのレポートでもまた、売上の出ていない企業ほど、Amazonが提供する販売促進ツールの利用度が低いという結果が出ています。​
売上上位企業が積極的に活用しているのは、A+コンテンツ、クーポン・タイムセール、ブランドストア、VINEなどで、実店舗に例えると、店舗デザイン・ポップ・セール・口コミ施策を総合的に回しているイメージに近いと言えます。

SEOとコンテンツ:商品ページは「営業パーソン」

ヒアリング事例では、商品ページを「営業パーソン」と位置づけ、ChatGPTなども活用しながら説明文や画像・動画コンテンツにしっかりリソースを投下している企業が多く見られます。​
また、競合レビューから現地消費者の不満・期待を読み取り、説明文を修正したり、ブランドストア全体のデザインやスマホでの見え方まで含めて「ブランドの世界観」を作り込むことが、売上拡大やファン作りにつながっています。

米+英Amazonをどう組み立てるか

アメリカ側ではデミニミス廃止など関税面のハードルが上がる中でも、やはりAmazon.comの集客力と市場規模は依然として魅力的であり、日本企業の多くが第一の越境EC市場として注力しています。​
そこにヨーロッパの巨大なトラフィックを持つ Amazon.co.uk を組み合わせれば、「米国+英国」を軸にした多国展開をより戦略的に描けるようになります。

しかし、英国向けにも無視できない税の課題があります。

英国向け販売で外せない「VAT135ポンドルール」

英国向け越境ECでは、関税より先に「VAT(付加価値税)」のルール理解が必須です。​
英国では低額輸入の免税枠(15ポンド)が廃止され、135ポンド以下の貨物については原則として輸入時ではなく販売時にVATを課税し、EC事業者やマーケットプレイスがVATを徴収・納付する仕組みになっています。​英国政府のガイダンスによると、135ポンド以下の商品を海外から英国消費者に販売する場合、オンラインマーケットプレイス経由であればプラットフォーム側がVATの納付義務を負う一方、直販の場合は海外事業者自身が英国VAT登録を行い、販売時にVATを上乗せ・申告する必要があります。​
135ポンドを超える場合は、輸入時にVATが課され、場合によっては関税も発生するため、どの価格帯の商品をどのロジック(直送かFBAか、マーケットプレイスか自社サイトか)で販売するかが、利益計算に直結します。

まとめ:情報アップデートと現場感覚の両立を

JETROのレポートが指摘するように、越境ECは新しいツールや制度変更が次々に出てくる分野であり、出品準備からプロモーション、各国税制対応まで、継続的な情報アップデートが欠かせません。​
一方で、実際に売上を伸ばしている企業ほど、市場調査・SEO・コンテンツ・レビュー活用など「現地消費者の目線」で仮説検証を続けており、データと現場感覚の両方を回していくことが、Amazon越境EC成功の共通パターンだと言えそうです。

越境ECは、一気にやる必要はありません。コツコツ積み重ねた企業ほど大きく伸びますので頑張っていきましょう!

参考文献:
越境ECの課題と克服ポイント(日本)JAPAN STORE参加企業に見る米英アマゾン出品の実態と工夫(JETRO)
Amazon Reigns: The Most-Visited E-Commerce Sites of 2025(Visual Capitalist)
UK VAT And Customs Duties: A Guide For Cross-Border E-Commerce Sellers(Forbes)

Writer 山田彰彦

山田 彰彦 代表取締役 越境ECコンサルタント eBay JAPAN創業メンバー、ヤフー株式会社コマース事業などを経てGMOグローバルEC(旧ジェイグラブ)株式会社を創業。越境EC歴24年。イーベイ・ジャパン公認コンサルタント、ジェトロ新輸出大国コンソーシアムEC専門家、中小企業庁「新しい担い手」越境EC委員も務める。

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