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越境ECブログ

百貨店は本当に斜陽なのか? AI時代に問われる「選ぶ力」の再定義

    こんにちは。GMOグローバルEC株式会社の横川です。

    百貨店の苦境ぶりを聞くことが増えました。確かに、地方百貨店の閉店や売上減少のニュースを見ると、その印象は強まります。しかし、最近海外事例を見ていて、少し考え方を変える必要があるのではないかと思うようになりました。鍵になるのは、「百貨店」という業態そのものではなく、“百貨店の定義”です。

    ちなみに、AIが登場するより昔の6年前にも百貨店とECの関係を記事にしています。
    参考:百貨店と化粧品と越境ECについて


    「箱型百貨店」が苦戦している

    かつて百貨店には圧倒的な価値がありました。

    駅前の好立地、品揃え、信用力、そして「何が良いか教えてくれる」接客力。情報が限られていた時代には、百貨店が“良いものを選ぶ場所”でした。

    しかし現在はどうでしょう。

    情報はSNSやYouTube、検索で得られるようになり、ECで世界中の商品が買える。レビューも大量にある。配送も速い。つまり、「モノを並べる場所」としての価値は低下しています。苦戦しているのは、“百貨店”そのものではなく、

    「商品を並べた箱としての百貨店」なのかもしれません。

    オーストラリアの百貨店MYERの動き

    そんな中、オーストラリアの百貨店MYERの動きは非常に興味深いものがあります。MYERは、AI時代を見据え、マーケットプレイス化を進めています。つまり、

    「陳列品を売る百貨店」から、「需要と供給をつなぐプラットフォーム」へ変わろうとしているのです。

    実はMYERは以前からeBayとも連携し、eBay内に公式ストアを出していました(それも前述の過去の記事で触れています)。ここが非常に重要です。

    日本では、「百貨店がECモールに出るなんて」という空気感が少なからずあったのではないかな?と思っていました。しかしMYERは、お客様がいる場所に行くという発想でした。

    自社チャネルにこだわるのではなく、eBayという巨大な流通圏を学習の場として活用していたように見えます(簡易的なVRレンズなども販売し、eBay内でVR百貨店を展開したり、かなり実験的なことをしていました)。

    「ショールームストア化」と何が違うのか?

    ここで思い出す人もいるでしょう。

    「それって、b8ta(ベータ)のようなショールームストアでは?」

    確かに少し似ています。ただ、思想はかなり異なります。b8ta型の発想は、面白い体験を提供すれば人は来るという「来店前提」のモデルでした。商品を試し、発見があり、体験価値を生む。
    しかし結果としては、店で見てAmazonで買うという流れが生まれやすく、収益化に苦戦しました。

    つまり、体験は作れたが、流通を握れなかったのです。

    一方、MYERが見ている未来は少し違います。

    AI時代では、「来店」ではなく「発見されること」が重要になるということに気づいています。

    昔は、「店舗 → 接客 → 購入」でした。

    EC時代は、「検索 → EC → 購入」へ変化。

    そしてAI時代は、「AIが提案 → ECで必要なら比較 → さらに必要なら店舗確認 → 購入」という順番に変わりつつあります。

    つまり、店舗は「入口」ではなく、“最後の確認装置”へと役割が変わる可能性があります。

    もし10年前にeBayへ出ていたら

    もし日本の百貨店も10年前にECモールなどへ本格参入していたら、状況は違ったかもしれません(中国などでチャレンジした百貨店はありましたが)。単に売上が増えたとかそういう話ではなく、組織の体制そのものが変わっていた可能性があります。

    例えば、

    ・商品データの整備
    ・海外顧客の理解
    ・越境EC運営能力
    ・海外需要の分析

    が蓄積されたはずです。

    百貨店は本来、地方工芸、老舗、限定品、地域ブランドなど、「良い商品へのアクセス権」を大量に持っています。もしECモールなどを、売場ではなく“学習装置”として使っていたら、「海外で評価される日本商品のデータベース」が形成されていた可能性もあります。

    例えば、「欧州40代女性 × 静かな高級感」、「米国ウェルネス層 × 発酵文化」、「富裕層 × 日本工芸」、などの反応データです。

    つまり、“審美眼”が勘ではなくデータになる未来です。

    AI時代に百貨店が戦う場所

    では、これから百貨店は何を武器に戦うべきなのでしょうか。
    おそらく、「選ぶ力(編集力)」だと思います。Amazon型の無限在庫競争では勝てません。

    しかし、「どの商品を、誰に、どう文脈化して提案するか」という編集力は、日本の百貨店がまだ持っている強みです。

    例えば、「パリの40代女性向け日本工芸」、「LAのウェルネス層向け発酵文化」、「静かなラグジュアリーとしての日本」など、日本を再編集して届ける。そしてAI時代では、それをAIが理解できる形でデータ化する必要があります。

    商品属性、用途、ストーリー、相性、文脈。

    つまり、“AIに推薦される状態”を作ること。
    10年前、日本の百貨店に求められた決断は、「ECモールに出るか否か」でした。そして今、第二ラウンドが始まっています。問われているのは、「AIモールに出るか」です。

    百貨店に必要なのは、プライドを捨てることではありません。プライドの定義を変えることなのかもしれません。「館を持つ誇り」から、「選ぶ力の誇り」へ。それができた百貨店に、次の時代の可能性があるように感じています。

    参考:How Myer is winning in the Agentic commerce era: Key insights from NRF APAC 2026

    Writer 横川 広幸

    横川 広幸 取締役 越境ECコンサルタント eBayJAPAN創業時に法人営業、マーケティングに従事。eBayに連携した越境ECサイト “Tokyotrad” で日本の仏具を世界86カ国に販売。自らの越境EC成功体験を越境ECアドバイザーとして日本全国でセミナー講演や個別相談を行う。

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