こんにちは。GMOグローバルEC株式会社の横川です。
「エージェンティック・コマース」の本格到来がもう目の前になってきているところで、Open AI(ChatGPT)、Google(Gemini)、Anthropic(Claude)の3社の姿勢というのが鮮明になってきたという記事を以前書きました。
参考:3大AI、見えてきたエージェンティック・コマースの方向性
この記事の中では、Googleがイケイケドンドンで、Open AIはやや引き気味といった感じでした。
ところが、ここに来てやや後退気味だったOpen AIがいきなりフルスロットルで突っ走ってきました。前回の記事が5月13日ですから、まだ1か月しか経っていません。それでこの変化ですから、AI関係はちょっとボケーっとしてるとあっという間についていけなくなりますね。
これまでは「AIが商品を探し、比較し、推薦する時代が来る」でした。しかし、今回VisaとOpenAIが提携するというニュースが流れ、その話が一気に一段階先に進んだことを示しています。
参考:Visa, OpenAI work together to support agent-led payments
簡単に言えば、「AIが買い物の決済まで行う世界」が現実味を帯び始めた、ということです。これまでのAIは、あくまで“賢いアシスタント”でした。
おすすめ商品を探し、
比較し、
条件に合う候補を提示する。
しかし、最後の「購入ボタン」を押すのは人間でした。今回のVisaとの連携は、その最後の工程に踏み込む話です。つまり、
AIが検索し、
比較し、
選定し、
決済まで実行する。
そんな「購買代理人(ショッピングエージェント)」に完全に進化し始めたのです。
以前話題になったGoogleのUniversal Cart(ユニバーサルカート)との関係で見ると、この動きは非常に分かりやすくなります。
参考:Google「Universal Cart」発表。UCPとの違いとは
Universal Cartは、「異なるECサイトの商品でも、Google側で横断的に買いやすくする」思想でした。
一方、今回のVisa×OpenAIは、「AIがサイトを横断しながら、実際に購入まで完結する」という発想です。言い換えると、
Universal Cart = カートの統一
Visa × OpenAI = 決済の統一
と言えるでしょう。そして最終的に目指している世界は、おそらく、「AIがあなたの代わりに最適商品を探し、自動で買う」という体験です。この変化は、越境ECにも大きな影響を与えます。
これまで人間は、
「有名ブランドだから」
「SNSで見たから」
「なんとなく良さそうだから」
という理由で購入していました。しかしAIは違います。「なんとなく有名」が効きにくくなる可能性があります。逆に重要になるのは、「AIが理解できる情報を整備しているか」です。こうした「機械が読める情報」が極めて重要になるでしょう。これはまさに、AI時代のECにおける新しい“読み書きそろばん”です。
また、日本企業にとっては意外な追い風もあります。AIは送料だけで判断しません。
つまり、「送料が高いから不利」だった日本製品も、品質優位があればAIに推薦される可能性が高まるのです。一方で、誇張表現だけのマーケティングは厳しくなるでしょう。AIはログが残る世界です。
「職人の想い」
「こだわり」
「なんとなくすごい」
だけでは推薦されにくい。
何が優れているのか、
他社と何が違うのか、
その根拠は何か。
“誠実に説明できる企業”が強くなる可能性があります。
なお、今回のVisaの話はクレジットカードだけではなく、デビットカード(即時引き落とし型)も視野に入っている可能性が高そうです。
※ちなみに、ここは軽い小ネタですが、人名のDavidとおそらく混ざって「デイビットカード」と呼ぶ人もいますが、スペル的にネイティブも「デビットカード(ラテン語由来の借り、負債から来ています)」です。
もちろん、すぐに世界が変わるわけではありません。最初は、
「低額決済だけ」
「日用品だけ」
「事前承認制」
のような形で始まるはずです。しかし今回のニュースは、
“未来の可能性”ではなく、
“未来の実装開始”
という意味を持っています。AIが「おすすめする時代」から、AIが「買う時代」へ。エージェンティック・コマースは、いよいよ実験段階を超え始めたのかもしれません。

































