こんにちは。GMOグローバルEC株式会社の横川です。
Ecommerce Guideの2026年版統計で、昨年あたりからAIがECに及ぼしている影響力について公表しています。内容は「EC市場は拡大している」という話ではなく、「AIによる構造変化」です。この統計は、その変化を非常に明確な数字で示しています。以下、提示されている構成に沿って解説します。
参考:Ecommerce Statistics 2026: AI, LLMs, and Agentic Commerce.
■ AI-driven traffic growth(AI経由トラフィックの成長)
最も象徴的な数字は、AI経由トラフィックの増加率です。
AI経由の流入は前年比で約4,700%増とされています。
これは単なる成長ではなく、流入構造そのものの変化を意味します。従来は検索エンジンが主な入口でしたが、AIが商品やサービスを推薦し、そのままECサイトへ誘導する流れが急速に拡大しています。現時点では絶対量はまだ限定的ですが、成長率という観点では最も重要なチャネルになりつつあります。
■ Consumer adoption(消費者のAI活用)
消費者側のAI利用も急速に進んでいます。
統計では、おおよそ7割前後のユーザーが何らかの形でAIに接触し、6割前後が購買プロセスにAIを活用しているとされています。特に若年層ではこの比率がさらに高く、AIはすでに一部の先進ユーザーのものではなく、一般的な購買行動の一部になりつつあります。

検索、比較、相談といった従来人が行っていたプロセスにAIが介在することで、意思決定のあり方そのものが変わり始めています。
■ Black Friday 2025(ブラックフライデー)
2025年のブラックフライデーにおいてもAIの影響が確認されています。
売上は前年比で約14%前後の成長を見せていますが、それ以上に重要なのは、購買の意思決定にAIが関与する割合が増えている点です。ユーザーが自ら探して購入するのではなく、AIが提示した選択肢の中から選ぶという行動が一般化しつつあります。
セールイベントであっても、従来型の検索・比較モデルからの変化が進んでいます。
■ Channel comparison(チャネル比較)
チャネル別に見ると、従来の検索や直接流入は依然として大きな割合を占めていますが、AI経由の流入が最も速い成長を示しています。
SNSも引き続き重要な流入チャネルですが、AIはそれに続く新たな入口として位置づけられています。現時点では規模よりも成長速度が重要であり、今後の主戦場になる可能性が高い領域です。

面白いのは、海外ではアフィリエイトが最大の影響力を持っており、Paid Social(SNS広告)がマイナス成長しているという点です。
■ Platform breakdown(プラットフォーム構造)
この統計の特徴は、「どのプラットフォームで売れているか」ではなく、「どこから流入しているか」に焦点が当たっている点です。
つまり、Amazonや特定のモールの優劣ではなく、ユーザーがどの経路で商品に到達しているかという構造変化が主題となっています。これは、流通の競争から流入経路の競争へと焦点が移っていることを示しています。
■ ChatGPT vs Google vs others(AI流入の内訳)
AI経由の流入においては、ChatGPTが圧倒的なシェアを占めています。
スクリーンショットの円グラフでは、ChatGPTが大半を占め、他のAIサービスは限定的な割合にとどまっています。これは現時点において、AI経由の流入最適化が特定のプラットフォームに集中していることを意味します。

この段階では、AI対策はほぼChatGPT対策と同義であると考えられます。
■ Agentic commerce(ACP / UCP / MCP)
エージェンティック・コマースは、今回の統計の中核となる概念です。
これはAIがユーザーの代わりに商品を選択し、場合によっては購買まで担う仕組みを指します。ACP、UCP、MCPといったプロトコルは、商品情報や価格、在庫などのデータをAI同士でやり取りし、最適な選択を導くための基盤です。
この変化は、ECの前提を大きく変えます。従来は人間が画面を見て判断していましたが、今後はAIがデータを読み取り判断する構造に移行します。そのため、見た目やデザイン以上に、データの構造化が重要になります。
■ Retailer AI adoption(事業者のAI導入)
事業者側のAI導入も急速に進んでいます。
統計では、約97%の企業が何らかの形でAIを導入、もしくは導入を進めているとされています。この数字は、AIが競争優位ではなく、前提条件になっていることを示しています。
レコメンド、価格最適化、在庫管理、顧客対応など、あらゆる領域でAIが活用されており、導入の有無ではなく、どのように活用するかが競争力の差になります。
■ まとめ
この統計から読み取れる変化は明確です。
AI経由の流入が急増している
消費者の大半がAIを利用している
購買意思決定にAIが関与している
AI流入は特定プラットフォームに集中している
企業のほぼすべてがAIを導入している
これらを総合すると、ECは「人が選ぶ世界」から「AIが選ぶ世界」へと移行しつつあると言えます。
■ 実務的なレベルで考えると
この変化に対応するためには、商品ページや商品データの設計を見直す必要があります。
重要なのは、視覚的な訴求だけではなく、AIが理解できる形で情報を整理することです。具体的には、スペックの明確化、用途の提示、比較可能な情報構造、文脈の提示といった要素が重要になります。
AIに解釈され、選択肢として提示されることが、今後のECにおける前提条件になります。
■ 結論
ECの競争は露出の競争から選抜の競争へと移行しています。そして、その選抜を行う主体は人間からAIへと移り始めています。この変化を前提に設計できるかどうかが、今後のECにおける成否を分けるポイントになります。

































