こんにちは。ジェイグラブの横川です。
昨年9月にアマゾンは返品に関するルールを変更し、アメリカのネット販売者の間ではその新システムについて議論が交わされ、他のモールとの比較も行われ、総論としてはアマゾンよりイーベイのほうが優れているという結論になっていました(参照:9月に変更されるアマゾン返品ルールについて米国セラーがイーベイと比較して議論中。軍配は?)。
端的に言うと、アマゾンの新しい返品システムは、頻繁に返品が行われる商品には、販売ページに注意を促す警告ラベルがつくようになっているため、これにより購入が減っていくという仕掛けです。また、同時に出品者には、頻繁な返品が起こらないよう、一定以上の品質の商品を売れと促しているわけです。これによって市場全体の健全化を図ろうとしていることがわかります。実際、この新システムで返品率は下がりました。一時的に。一方、出品者のコストは増えることになりました(返品率が一定の閾値を超えた商品に対して新たな手数料を課すため)。
「一時的に」と前述したように、この方法をもってしても、解決できない事例はあり、それによって、一見うまくいってたようにみえる返品対策もここに来て鈍化したようです。
原因は「不正返品」です。FBAに参加するということは、発送、梱包、返品対応といった物流業務をアマゾンに委ねているわけで、局所的にブラックボックスになっている部分があるためです。
以下は、NBCが報じた記事ですが、長文ですので、要約を後半に書いてまとめます。
「簡単すぎる返品」がAmazon出品者に大きな打撃、ただし返品率に鈍化の兆しも
Amazonでの返品は消費者にとっては無料で簡単ですが、世界最大のECサイトで大半の商品を販売している小規模事業者にとっては、リスクと高コストを伴う問題です。返品の問題により、一部の出品者は人気の「Fulfillment by Amazon(FBA)」プログラムからの撤退を余儀なくされ、CNBCに対し「いっそAmazonプラットフォーム自体から退きたい」と話す出品者もいます。
問題の核心にあるのは「返品詐欺」の急増です。この結果、本来は新品を注文した顧客に中古品が誤って届くという事例が増えています。特に深刻だった例として、乳幼児向け製品を巡る2件の事案では、中古のおむつや、他人の腐った母乳が入った保冷ボトルが顧客に送られていました。
「消費者は、どれほど多くの小規模事業者がAmazonに出店しており、自分たちの返品行動が私たちのような家族経営にどれだけ影響を与えるか、理解していないと思います」と語るのは、Amazonで再利用可能なおむつを販売するBeau and Belle Littlesのオーナー、ラシェル・バロン氏。
彼女によれば、返品トラブルが原因で事業が壊滅状態に陥りました。Amazonが、返送された中古のベビー用品を再出荷してしまったため、汚れたおむつが新たな顧客のもとへ届いてしまったのです。
「実際に、うんちのついたおむつが2枚、出荷されていました」と彼女は語ります。
全米小売業協会(NRF)の2024年の報告によれば、アメリカ国内の小売返品のうち約14%が詐欺によるものとされ、2018年の5%から大きく上昇しました。返品による損失は小売業界全体で8900億ドルにのぼると見積もられています。
2024年6月、AmazonはFBA出品者に対し、返品率が一定の閾値を超えた商品に対して新たな手数料を課す制度を導入しました。FBAに参加する出品者は、発送、梱包、返品対応といった物流業務をAmazonに委ねています。
この新制度が導入されてから数か月後の9月、EC分析企業Helium 10の調査では、米Amazon出品者の返品率が5%近く低下したと報告されました。
「この制度は出品者に、より高品質な商品・説明ページの提供を求めることになり、結果的に品質向上につながっています」とHelium 10のGM、ゾーイ・ルー氏は述べています。
また、Amazonは一部の商品に「返品が多い商品」という警告ラベルを付けるようになっており、これも返品率の減少に貢献していると考えられます。
価格の上昇
しかしこの新たな手数料制度は、価格の上昇も引き起こしています。
EC分析会社SmartScoutの調査では、出品者の65%が「2024年にAmazonの手数料変更が直接の原因で価格を引き上げた」と回答。他にも、多くの出品者が「返品詐欺への対抗策」として価格を上げたと語っています。
CNBCは計7名のAmazon出品者に取材し、返品コストの増大にどう対応しているかを聞きました。
「Amazonでの純利益は1%ちょっとしかなく、その原因はすべて詐欺と返品悪用です」と語るのは、ホットウィール用保護ケースを販売するSterling Spectrumのロリ・コーレット氏。彼女によれば、返品率はAmazonで4%、Walmartなど他のマーケットプレイスでは1%とのこと。「最終的に責任を負うべきなのはAmazon。Amazonが顧客を厳しく管理すれば、人々はこのような行為をしなくなります。」
AmazonはCNBCに対し、「返品詐欺には一切の容赦をしない」とし、一部の詐欺行為には返金拒否や本人確認の義務付けなどの措置を講じていると回答しました。
自前の監視システム
Mike Jelliff氏は、プロ用音響機器を自社ブランド「GeekStands」でAmazonを含む9つのプラットフォームで販売しています。Amazonでの返品率は、他のプラットフォームの約3倍だといいます。
「eBayでは、特定の顧客をブロックできますが、Amazonでは同じ顧客がまた購入できてしまいます」と彼は語ります。
Jelliff氏は、テキサス州タイラーにある自社倉庫に約40台のカメラを設置し、すべての出荷・返品・開封を記録しています。これは、返金詐欺の訴訟や申立ての際に証拠として使用されます。彼は常習犯のブラックリストを持ち、使用済みや破損品の返品によって商品が完全損失となることを防ごうとしています。
Amazonは、Jelliff氏のようなFBA非利用者にとっても、返品対応を改善してきたといいます。たとえば2023年からは100ドル超の商品に関して、自動返品ラベルの提供を拒否するオプションを導入し、これにより返品率は低下しているとのことです。
返品品が破棄される理由
返品された商品が再販売可能か詐欺かを見極める作業は、商品ごとに異なり、非常に手間がかかります。そのため誤判断も起こりやすいと専門家は指摘します。
「これほど大規模な業務では、どうしても見逃しがあります」とHelium 10のルー氏。「少数ではありますが、ブランドにとっては大きな問題です。」
母乳保冷ボトルのブランド「Ceres Chill」の創業者リサ・マイヤーズ氏は、そのような体験をした一人です。
2023年、FBAを利用していたマイヤーズ氏の商品が、腐った母乳入りで顧客に届いたといいます。レビューには「この臭いは一生忘れない」と書かれたそうです。
「大げさに聞こえるかもしれませんが、他人の体液が台所で腐っている状況で、自分の子どもに使うつもりだった製品です。あの瞬間、私は泣き崩れて、『どうしてこんなことが起きたのか分からない』と思いました。」
この事件を機に、マイヤーズ氏はFBAから撤退。プライムバッジという利点も手放しました。
「FBAをやめることでビジネスに打撃はありましたが、利益のために顧客の安全や心の健康を犠牲にすることは絶対にしません。」
現在、返品はすべて「GoodBuy Gear」というベビー用品専門リセール業者に外注。2024年には返品されたベビー用品20万点の再販売を見込んでいます。
参考:Easy returns cause big trouble for Amazon sellers, but return rates show signs of slowing
まとめ
上記記事の要点はこうなります。
1. アマゾンでの返品のしやすさが出品者に大打撃
- 消費者にとって返品は簡単で無料だが、中小規模出品者にはコストとリスクが大きい。
- 返品詐欺(使用済み商品の返送など)が増加し、事業継続に支障をきたす例も。
2. 返品詐欺の急増とその実例
- その返品された中古品が不正だったにも関わらず出品者の関知しない形で別の顧客に再発送される事例が発生(例:うんち付きおむつ、他人の母乳が腐った状態で入った哺乳瓶)。
- そのため出品者はいわれのない非難を受け信頼を損なう深刻な被害を受けている。
3. アマゾンの対応策と返品率の鈍化
- アマゾンは返品率が高い商品に警告ラベルを表示し、返品率が一定以上の出品者に手数料を課す新制度導入。
- Helium 10の調査では、導入後に返品率が約5%減少したものの、この仕組みでも不正返品は防げていない。
4. 価格上昇への影響
- 65%の出品者が手数料や不正返品詐欺の影響で価格を引き上げ。
- 利益が1%以下になる出品者も存在。
- 返品率も他のプラットフォームと比べて高い(ウォルマートの4倍、イーベイの3倍)
5. 再販・リユースの取り組みと課題
- 出品者の中には返品処理をアマゾンではなく専門業者(例:GoodBuy Gear)に委託する動きも。
- 良質な中古品の再販は手間がかかるが、環境負荷や損失軽減のために重要。
先日、アメリカ進出にフォーカスしたイベントのパネルディスカッションに登壇したのですが、やはり、返品、返金に関する質問は多く、多くの方が気にしていることがわかりました。
しかし、一般的に返品はうまくやれば、次に繋がる大きなビジネスチャンスでもあります(参照:返品は大チャンスなのですが・・・)。
ただし、アマゾンを利用する場合は、このビジネスチャンスの芽は摘まれています。この点は非常に機械的でオンラインショッピングが退屈だと言わしめる要因でもあります(参照:海外消費者の大半がECに楽しみを見いだせなくなっている)。そうした様々な面を考慮して進出方法を検討しましょう。

































