【補足】(2025/09/29)
トランプ関税の影響で、対米国については以前のようには行かなくなってきましたが、越境EC自体ができなくなったわけではありませんし、ましてやアメリカ以外の国やエリアは従来通りです。
しかしながら、メディアを連日賑わせたこともあり、越境EC自体がしばらくできないと早とちりする人が増えています。そうしたことはないということも申し添えておきます。
参照:トランプ関税で越境ECできない?早合点に注意しましょう
こんにちは。 ジェイグラブの横川です。
自治体にお勤めの方にとっていまは、秋頃の本格的な予算検討前の情報収集の時期かと存じます。自治体にとっての大きなテーマとしては、地方創生、少子高齢化対策、地元企業の活性化があると思います。これらに貢献できるもののひとつが越境ECです。景気が上向けば、住民の定着、外部からの人的流入、少子高齢化の歯止め、税収アップが見込めるからです。
そこで、越境EC事業を検討しようということになるわけですが、委託する事業によっては、理念的に親和性があるものとないものがあり、選択を誤ると長期プラン的に理想的な結果をもたらしません。そこで、自治体の理念に沿う事業とそうでない事業の違いを解説します。
国からの交付金にせよ、自治体独自の資産にせよ、元をただせば住民の貴重な血税です。無駄にならない方法は何なのか、ご理解の一助になれれば幸甚です。
越境ECを行う際の課題とは
地元企業には、縮小する日本経済から世界に目を向けてもらい、事業の継続、事業承継、雇用維持をしてもらいたいと考えているはずです。

ここからは釈迦に説法の話になりますが、最新の人口ピラミッドによれば、長らく人口の多い世代の代名詞だった第一次ベビーブーム世代を第二次ベビーブーム世代が抜いて、最も人口の多い世代になっています。しかし、この世代は50歳を超えており、働ける時間も残り15年くらいです。ここからは徐々に人口を減らしながら老境へ向かっていきます。
そして現在0〜4歳児が25~29歳の青年になる頃には、第二次ベビーブーム世代は後期高齢者となっており、人口を減らしつつとはいえ、実に若者の2倍近い人口で存在しているという状況が予測できます。後期高齢者となった第二次ベビーブーム世代は、平均貯蓄額などを見てもこれまでの高齢者より蓄えが少なく、そこに年金を駆使しながら食費・光熱費・医療費を支払うことで精一杯で他のモノ・コトへの消費ができる人は一握りでしょう。もう消費者として見ることはできません。
こうした状況に嫌気が差し、日本を捨てて海外移住する人も多くなるかもしれませんし、外国人労働者を受け入れていかなければ社会が回っていかないというのも予想できます。
こうした状況になることはもう20~30年前からわかりきっていたことです。ではこの状況を解決する方法はあるのかと言えば、いくつかあるにはあります。
海外と接点を持つのは嫌だ、外国人を受け入れるのも嫌だという考えが支配的ならば、地域総出で「贅沢は敵だ!」のスローガンを復活させて、車を持つな、携帯捨てろ、ネットするな、ゲームをするななど、生活レベルを100年前に下げる方へ条例を作っていくのが良いでしょう。経済成長が見込めないのですから生活レベルを下げるしかありません。
一方で、日本国内市場のみでは難しくなるので、活路を海外に見出そうという空気が醸成されていれば、解決策のひとつに越境ECがあります。ただし、労働者人口の減少も同時進行していますので、自力では運営不可能という企業も多いでしょう。
そこで注目されるのが「越境EC代行」です。種類としては購入代行と販売代行があります。これにより越境ECを自治体事業とし、民間の代行業者に越境ECを委託して地元経済を盛り上げるという計画が立てられます。そこに、自治体として地元の企業にどうなってほしいのかという思い・理念を加えると親和性の「ある・なし」が見えてきます。
購入代行とは
購入代行は以下のようなシステムです(クリックで拡大)。

購入代行は、既存の日本国内向けのECサイトに海外からアクセスがあると、瞬時に翻訳された架空サイトを表示し、外国語で買い物できる状態を作ります。
そして海外消費者が購入すると、代行業者に実際の商品をもつ地元企業から購入するよう購入指示がシステムから飛びます。
代行業者は、地元企業から商品を購入し、国際配送します。
販売代行とは
販売代行は以下のような仕組みです(クリックで拡大)。

販売代行は、地元企業が海外向けECサイトを開設したり、海外ECモールアカウントを開設したりする代わりに、代行業者が海外向けECサイトに出品して海外消費者にアピールするスタイルです。
売れた場合、商品は国内の指定倉庫に送るようになっていることが多く、指定倉庫へは、売れた都度発送する場合と、売れる前からある程度指定倉庫に在庫しておくなどオプションはあります。
そして、指定倉庫から国際配送します。
共通点と相違点
共通点
- 海外の消費者にとっては日本の物が買える。
- 地元の企業にとっては自社の物が海外の消費者の元に届く。
- 外国語や外国人と接することなく、日本人だけを相手にしていれば済む。
という点は共通しています。
相違点
購入代行
購入代行=主戦場は日本国内、地元企業より海外消費者、地元企業にナレッジ残らず。
購入代行は、既存の日本語サイトに訪問してもらえないと売上に繋がらないため、認知度、知名度を上げる作業が必要になります。そして、ベースは日本語サイトなので、主戦場は国内市場のままです。
そして、注意が要るのは、海外消費者が既存サイトに訪問するよう購入代行業者が工夫をしてくれるのか、それとも各社で自助努力すべきと突き放しているのかチェックしておく必要があります。
購入代行業者にとって、とにかく売上をつくるためには、興味関心を持つ海外消費者の発掘が最優先事項になるため、地元企業と海外消費者のどちらを向いて仕事をしているのかと言えば、海外消費者です。
肝心なのは海外消費者集めなので、ロイヤルカスタマー作りはできませんし、どうすれば売れるようになるのか、異文化地域の消費者に刺さる運営の仕方などのナレッジが地元企業へ仕組み的に還元・蓄積されない可能性が非常に大きいです(海外の人に刺さるような表現を目指そうとすると、元の日本語を日本の商習慣から外れた表現にする必要も出てくるので、帯に短し襷に長し状態になってしまうこともありえます)。
販売代行
販売代行=主戦場は海外、地元企業にも寄り添いながら海外消費者開拓、地元企業にナレッジ残る。
販売代行は、完全に海外市場に打って出るためのサイトを用意し、そして業者によっては海外ECモールにも出品するので、主戦場は海外市場です。
その上で海外消費者向けにSNS等で情報発信などを行い、海外消費者開拓もしていることが多いです。
購入代行業者が地元企業より海外消費者の方に顔が向いているのに対し、販売代行は両方に顔を向けて仕事をしています(地元企業の意向に添いながら、海外消費者開拓もする)。
そして、地元企業との連携も購入代行より密なので、どうすれば売れるようになるのかといった表現力などに関するテクニックなどのナレッジも地元企業に還元・蓄積されるケースが多いです。したがって、自治体事業終了後も自走化できるようになっています。
結論(自治体事業に向くのはどちらか)
ここまで、自治体事業として越境ECを海外販路開拓で行う場合に、代行業者に委託するとしたら、購入代行と販売代行のどちらが向くのか比較してきました。
とにかく地元企業の地元産品が海外消費者の元に届きさえすればよいというのであれば、購入代行でも販売代行でもどちらでも良いと言えます。
しかし、地元企業には、自治体事業を自走化のきっかけとして事業終了後も継続していってほしいという考えがあるのであれば、販売代行のほうが理念的に親和性があります。
さいごに
ジェイグラブ株式会社のサービスである、ジェイグラブモールは下記の経緯からサービス開始当初より、販売代行を志向して作成してまいりました。
2021年のコロナ禍の折に、東京都から越境ECで自走化できない企業のために販売を代行できる仕組みを作れる企業には補助金を出すという話が来ました。弊社はその問いかけに呼応し、資料を作り、プレゼンを行ったうえで採択され、ジェイグラブモールを構築。2022年3月にサービスを開始(当時は弊社を含め4社採択。現在も事業を継続運営しているのは弊社のジェイグラブモールのみ)、オプションサービスとして、オンラインだけではわかりにくいものはサンプルを現地で展示し、触らせるなどの体験を通してオンライン購入を促すショールームストア(O2O)でイオンモールカンボジアの協力も得て開始しました(この他にアメリカ、イギリス、シンガポールでもショールームストア実績あり)。
参加事業者の意向に沿った出品、販売、結果報告などを行えるので、参加企業の自走化に向けた資料も残せます。
そのため、過去に以下の自治体等に海外販路開拓の一環としてジェイグラブモールが採択されました。
- 神奈川県川崎市
- 静岡県静岡市
- 群馬県
- 奈良県((公財)奈良県地域産業振興センター)
- 日本商工会議所
- 熊本商工会議所(一部)
代行以外の支援も可能です。
なお、ジェイグラブでは、代行ではなく、地元企業が自走化できるように海外ECモールのアカウント作成・出品・配送・売るためのコツ、トラブル解決等を伴走支援することも可能で、このパターンでも成功事例があります(熊本商工会議所)。ただし、このパターンは参加地元企業の熱量が高くないと、支援期間が過ぎたあとは何もやらなくなるということが多く、結果的に税金の無駄遣いになってしまう可能性もあるため、熱意のある企業を集められないときにはあまりおすすめしません。





































