こんにちは。ジェイグラブの横川です。
中国の独身の日(ダブルイレブン)は、ECから波及して様々な経済効果を生み出すイベントとしてご存じの方も多いでしょう。一時は――計算上のカラクリがあるとはいえ――短期間で日本の大手ECモールの1年分の売上を売り上げてしまうなど大迫力でした。計算上のカラクリについては下部「関連記事」を御覧ください。
そんな”すごかった”独身の日も、中国当局のIT企業への規制強化(過度な商売性を出す演出は控えるよう通達)により、盛り上がりに欠けるようになり、さらに、福島のALPS処理水問題あたりから、日本の商品が一斉にランキング外になるという、非常に分かりやすい現象も起きています。
(2025年11月23日追記)
ちなみに、Temuなどで販売されている玩具の96%は欧州規制に合致しておらず、さらにその86%は子供にとって有害であるという記事をフランスのル・モンド紙が報じています、1年以上前に韓国も同様の報道しています。こういう報道があると、外国産おもちゃ全般の規制を強める可能性があるわけですが、米国が関税のときに行ったように、特定の国で生産されたものだけを規制強化する方向でいってほしいものです。
参考:86% of toys sold online by non-European e-commerce retailers dangerous for children, study says
とか思っていたら、欧州議会の議員らが欧州委員会にTemu、Shein、AliExpressに対し、EU規則に違反し違法な商品を販売したことについて責任を問うよう強く求めるそうです。
参考:EU action against non-compliant e-commerce platforms(2025年11月24日追記)
政治的な話ではなく、純粋に独身の日について触れている記事をようやく見つけました。やはり盛り上がっていなかったようです。その要因を3つ挙げており、
・中国のインターネット人口が飽和状態に達した
・割引がもはや特別なものではなくなった
・中国消費者の使えるお金が少なくなっている
とのことです。
参考:China’s Double 11 shopping festival loses its shine
私は毎日世界中のEC関連ニュースを見ているのですが、日本だけでなく、世界中のメディアで独身の日について触れている記事が激減しており、世界的に魅力を失いつつあるのかもしれません。私はむかしから中国市場に魅力も興味も感じていなかったので、個人的にはどーでもいいんですが^^;。
私は、「越境ECは経済活動ではあるが、国際政治が影響する分野ゆえに、新聞やネットニュースの国際欄はしっかり見るよう」セミナーなどで話します。そうやって考えると、いまの日中関係で、それでも中国進出したいというのであれば、相当な勝算でもない限り選択肢に入らないでしょう。
そういうわけで、わざわざ独身の日について取り上げる必要もないかな?と思ったのですが、その代わりに増えた、ちょっとおもしろい動きを伝えるニュースがあったので、いくつかかいつまんで紹介します。
独身の日ブームが、消費者のデフレ的購買行動で売上鈍化(AP通信)
中国最大のオンラインショッピングの祭典「独身の日」の売上高は前年比で約18%増加した(売上高の約18%増加は、売上高が合計1兆4400億元に達した2024年の約27%増加の半分強)が、バーゲンハンターがより手頃な価格の買い物を選んだため、成長のペースは鈍化した。
不動産市場の長期低迷、賃金の低迷、そして通常ならオンラインショッピングで散財する可能性が高い中国の若者の失業率の高さにより、消費者は節約をし、支出を慎重にしている。
今年のイベントは例年より約1週間長かったため、比較は単純にはできないものの、期間を延ばしたことは、需要が低迷する中で、eコマース企業の売上を支えるためでもあると分析されている。
参考:China’s Singles’ Day online shopping bonanza’s sales slow as shoppers opt for more affordable deals
ロシア、「ダブル11」ショッピングブームに加わる(新華社英語版)
モスクワの賑やかな主要道路に明るい「11.11」の看板が出現し、ロシアのオンライン販売業者による「ダブル11」セールを宣伝され、今ではモスクワでも認知されるようになった。
ワイルドベリーズやオゾンなどロシアの大手電子商取引プラットフォームは、電化製品、ファッション、家庭用品を大幅割引で提供しており、ソーシャルメディアのフィードにはダブル11セールを宣伝するインフルエンサーが多数登場している。オゾンが発表したデータによると、同社はセール期間中に顧客活動が急増したことを記録し、11月10日の夜にはピークを迎え、1時間以内に72万件を超える注文が寄せられた。
分析によれば、衣料品、履物、アクセサリー、家庭用品、化粧品、香水は伝統的に季節のプロモーションで最もよく売れるカテゴリーに入っている。
世界最大のオンライン小売市場である中国は、ロシアの電子商取引セクターの急速な成長において重要な役割を果たしている。ロシアのマクシム・レシェトニコフ経済発展大臣は、ロシアの国際電子商取引の約80%が中国との間で行われていると述べ、ロシアのプラットフォームは現在、中国に支店を持ち、現地で注文を集荷していると付け加えた。
参考:Russia joins “Double 11” shopping frenzy as e-commerce surges
中国・ロシアEC郵便列車サービス開始(ロシアのアジア回帰誌)
家庭用品、家電製品、電子製品を積んだ46個のコンテナからなる特別列車が、11月11日、中国の琿春鉄道検問所からモスクワへ直行した。これは、中露郵便コンテナ列車「琿春-モスクワ」の正式な運行開始を記念するものだ。この列車は、中国とロシア間の郵便物や通常の貿易品の越境輸送を担い、琿春とモスクワ間の効率的な物流回廊の構築に貢献する。輸送対象の多くは、アリババ、タオバオ、ヤンデックス、ワイルドベリーズといった企業による電子商取引の配送だ。
琿春は中国吉林省東部に位置し、中国、ロシア、北朝鮮の国境が交わる場所にある。
琿春検問所管理局は、道路検問所に10時間勤務体制を導入し、鉄道検問所に24時間体制の勤務体制を導入するなど、通関の効率性を高めるための特別措置を講じている。
琿春-モスクワ線は、これまでに計164本の特別列車が運行され、38万点以上の貨物を輸送した。これにより、中露間の貿易交流やEC取引の発展が促進されている。
参考:China-Russia E-Commerce Postal Train Service Launched
おわりに
当初より盛り上がりに欠けることが予想されていたこともあって、あまりダブルイレブンを取り上げる記事がありませんでしたが、昨年まではほとんどなかった中国とロシアの近接を伝えるものが増えていました。この両国がECを通して関係強化をしていたのは、ロシアのウクライナ侵攻直後からでした(下部「関連記事」参照)
これは完全に冷戦が再び始まったという感じですね。かつては資本主義・自由主義と共産主義・社会主義という対立構図でしたが、近年は民主主義と権威主義でしょうかね。以前の冷戦が終わったのは1989年のベルリンの壁崩壊か、1991年のソ連崩壊で、この頃生まれていない世代や、生まれていても幼くて当時の記憶があまりない世代も含めると、現在日本の生産人口の約半分は、かつての冷戦を知らない世代になります(そんなに時間が経ったんですねぇ)。
ところで、以前にも何度も書いていますが、ネットは安価で全世界を相手にできるツールなのに、実店舗展開でもあるまいし、ターゲットを決めて始めるというナンセンスな戦略を採用する企業や専門家や支援機関が後を絶ちません(ターゲットを決めさせたがるのは、そうすれば専門家っぽく振る舞えるからでしょう。そのアドバイスがかえってネットの本質を知らない偽物であることを自らで暴露してるんですけどね)。そうした情景をみるにつけ、いつも遠くをみてしまいます(視力の回復になればいいのですが)。どこかの国に絞るということは、何かあれば一気に減収につながるリスクがあるので、全世界対応すべきだと言い続けた意味がこれではっきりお分かりいただけたかと思います。
































