GMOグローバルECの横川です。
これまでAIが商品を選び、AIが買い物を代行する「エージェンティック・コマース」について何度か取り上げてきました。その多くはBtoC(消費者向け)の話でしたが、今回の記事はBtoB(企業間取引)の話です。しかし読んでみると、「BtoCの延長」ではなく、BtoBだからこそ大きく変わる世界が見えてきました。
参考:How B2B ecommerce companies can prepare for agentic AI discovery
AIが企業の購買担当者を支援する時代になると、変わるのはECサイトだけではありません。商品カタログ、技術資料、仕様書、さらには営業活動そのものが変わっていく可能性があります。
まず、BtoBではAIがいきなり勝手に高額商品を購入するような世界にはなりにくいでしょう。企業間取引では、契約、承認、価格交渉、取引条件など、人が確認しなければならない要素が多くあります。
そのため最初に普及すると考えられているのは、「購買業務の効率化」です。例えば、
・メールで届いたPDFの発注書をAIが読み取る
・ERPや受発注システムへ自動入力する
・在庫を確認する
・納期を回答する
・欠品なら代替商品を提案する
こうした一連の業務をAIが担当するようになります。
つまり、AIは「買い物をする」のではなく、「企業の購買担当者や営業担当者を支援する存在」として活躍し始めるのです。ここで重要になるのが、商品情報の質です。
例えばネジを販売している企業があったとします。従来なら、
「ABC-01 ステンレスネジ」
という商品名だけでも人間の営業担当者は理解できました。しかしAIは違います。AIが本当に知りたいのは、
・どんな用途に向いているのか
・屋外で使えるのか
・食品工場でも利用可能なのか
・海水環境でも耐えられるのか
・使用温度は何度までなのか
・どの規格に適合しているのか
といった、比較や判断に必要な情報です。つまり、「商品名」ではなく、「商品を正しく理解するための構造化された情報」が必要になります。これは以前、このブログで紹介した「AIに選ばれる商品情報」と同じ考え方です。以前、
・属性
・用途
・比較
・価格帯
・ストーリー
という5つの視点が重要ではないかと書きました。
今回の記事でも、「ユーザーが何を実現したいのか」という意図をAIが理解できる情報が重要だと紹介されています。キーワード検索の時代から、「目的で探す時代」へ変わりつつあることを改めて感じます。
さらにBtoBでは、規制や認証も大きな要素になります。例えば海外へ販売する場合であれば、
・FDA
・CE
・RoHS
・REACH
・UL
・Lacey Act
など、製品ごとに確認すべき規制や認証が数多く存在します。
人間の営業担当者であれば経験で判断できることでも、AIが適切に提案するためには、それらの情報が機械にも理解できる形で整理されている必要があります。これは越境ECに取り組む企業にとっても非常に重要なポイントです。
これまで商品カタログは、「営業担当者が説明するための資料」でした。しかしAI時代には、その役割が変わります。商品カタログは、
「AI営業マンが読むためのデータベース」
へ進化していくのです。営業担当者は、お客様との関係づくりや課題解決により多くの時間を使い、AIは商品検索、比較、提案、資料整理といった業務を支援する。そんな役割分担が当たり前になる日も、それほど遠くないのかもしれません。
BtoCでは、「AIに選ばれるECサイト」が重要になりました。そしてBtoBでは、「AI営業マンに理解される商品情報」が競争力になります。AI時代に必要なのは、新しい営業手法だけではありません。
AIが正しく理解し、比較し、提案できる商品データをどれだけ整備できるか。それが、これからのBtoB企業にとって、新しい競争力になっていくのではないでしょうか。

































