『安さ神話』が終焉を迎えたかもしれません…。
2025年4月、越境ECの巨人TemuとSHEINが価格戦略を大転換します。
中国発の人気ECプラットフォーム「Temu」と「SHEIN」が、米国向けの広告費を大幅に削減だけでなく、販売価格も引き上げると正式に発表しました。背景には、トランプ大統領による中国製品への大幅な関税引き上げと、長年続いてきた「免税措置(de minimis(デ・ミニミス))」の撤廃があります。
今回は、現地の最新報道をもとに、越境ECビジネスを展開する日本人事業者が今後どのような戦略を取るべきかを考察します。
Temu・SHEINが米国で急成長した理由とは?
Temu(PDD Holdings傘下)とSHEIN(本社は現在シンガポール)は、超低価格の商品を武器に米国および世界中の若年層を中心に爆発的な人気を獲得してきました。
両社はSNSやインフルエンサーを活用した大規模なデジタル広告投資で、AmazonやWalmartといった米国の大手小売を脅かす存在に成長。2023年には、米国で最も広告費を投じた中国系企業となり、取り扱い額も2つのサービス合わせて2024年に10兆円を超えたという報道もありました。
トランプ再登場が越境ECに与えた衝撃 関税&デミニミス撤廃で事業モデルが崩壊!?
2025年1月の大統領復帰後、トランプ氏は中国製品への関税を最大145%まで引き上げ、さらに「800ドル未満の小口輸入は関税免除」というデミニミス規定を撤廃しました。この規定は、SHEINやTemuのような中国発ECが米国市場で急成長する原動力で、2023年には、デミニミスを利用した中国からの小口荷物が14億個(2013年は1.4億個)にも達しています。
新関税と免税撤廃の直撃を受け、両社は「運営コストの急増」を理由に、4月25日から米国向け商品の値上げを発表しました。加えて、SNSやGoogleなどのデジタル広告費を大幅に削減。Temuは4月9日以降、Google広告を米国で完全停止し、FacebookやInstagramなど主要SNSでの広告支出も2週間で31%減少。SHEINも同期間で19%削減しました。この広告削減は、Meta(Facebook/Instagram)やYouTubeなどの米系SNSプラットフォームにも大きな打撃となっています。
Bloombergによれば、TemuとSHEINは、小包関税導入を前に米国での駆け込み購入が増え、売上が急増すると予測しています。
日本の越境EC事業者が今とるべき具体的アクション
新関税とデミニミス撤廃により、「中国からの激安直送」というモデルは大きく揺らぎ、米国市場は「安さ一辺倒」からの転換期に入ります。今後は価格競争力だけでなく、商品の品質、ブランド力、現地在庫や配送の最適化がより重要になると予想しています。
また、TemuやSHEINのような“広告頼み”の集客モデルは、今や限界に近づいています。コスト高&規制強化で、持続は困難になっていますので、今後はSEOやオウンドメディア、インフルエンサーとの協業など、より多様な集客チャネルの構築が求められます。
加えて、「安さ」だけでなく、日本企業は日本品質、独自性、安心感など、日本ブランドならではの強みを徹底的に前面に出す、日本発ならではの価値訴求も重要です。広告戦略とブランド戦略の見直しが迫られていると考えてよいと思います。
米国の通商政策は今後も流動的です。関税や免税規定の変更は即ビジネスモデルに直結するため、現地の法規制・税制動向に常時アンテナを張り、柔軟に対応できる体制が不可欠です。
おわりに
米中貿易摩擦の激化と規制強化は、越境EC市場に大きな地殻変動をもたらしています。TemuやSHEINの戦略転換は、価格競争一本槍の時代の終焉と、多様な価値訴求の重要性を示しています。同時に、今後は現地在庫や現地法人の設立、現地配送網の構築など、より本格的な現地化戦略も視野に入れるべきでしょう。
一方で、日本企業にとっては、安さ以外の価値で勝負できる絶好のチャンスとも言えます。日本品質を活かした“高付加価値商品”を、現地ストックを持って迅速に届けるモデルや、地域密着型のSNSマーケティングなどが挙げられます。
法規制の変化に敏感に対応しつつ、日本発ならではの強みを活かした海外ビジネスを構築することが、今後の成功のカギとなりそうです。
参考文献:
Temu and Shein warn of US price hikes from next week due to Trump tariffs(The Guardian)
Temu and Shein Cut U.S. Advertising(PracticalEcommerce)
Temu, Shein See US Sales Surge Ahead of Small-Parcel Tariff(Bloomberg)



































