こんにちは。GMOグローバルEC株式会社の横川です。
近年、ラグジュアリー(高級品)分野のEC成長が鈍化しているという報告が出ています。
参考:Luxury eCommerce growth slows as AI reshapes shopping
一見すると「高級品はオンラインでは売りにくい」という従来からの話にも見えますが、今回のポイントはそこではありません。
本質は、AIの普及によって「購買のプロセスそのもの」が変わり始めていることにあります。
これまでのECでは、消費者が自ら検索し、複数の商品を比較し、その中から選ぶという流れが一般的でした。しかし現在は、AIが最初に候補を絞り込み、その中から人が選ぶという構造に変わりつつあります。
つまり、こういうことです。
「比較で勝つ前に、比較対象に入らなければならない」
この変化は、ラグジュアリー市場において特に顕著に表れています。
高級品は価格が高く、購入の意思決定に「信頼」や「文脈」が強く影響します。
AIはスペック比較には強い一方で、ブランドの背景や価値といった“意味づけ”にはまだ弱い側面があります。そのため、もともとブランド力を持つ企業は引き続き有利である一方で、オンラインだけでは購買が完結しにくくなっているのです。
ここで重要なのが、日本製品への示唆です。
日本製品は本来、高品質・職人性・ストーリー性を持ち、構造的にはラグジュアリーと非常に近いポジションにあります。しかし現実には、その多くがAIの選定プロセスにおいて「存在しないもの」として扱われています。
理由はシンプルです。
- 認知がない
- データが少ない
- 構造化されていない
AIは「知られているもの」「整理されているもの」しか扱えません。どれだけ良い商品であっても、情報として認識できなければ候補に入らないのです。
つまり、日本製品が直面している問題は品質ではなく、「認識されていないこと」にあります。
これは戦略の前提を大きく変えます。
これまでは「良い商品を作れば売れる」という発想で問題ありませんでした。
しかしAI時代は「AIに選ばれる形で存在しなければ売れない」となります。
ではどうすればいいのか。
第一に、AIに拾われる場所に出ることです。
マーケットプレイス(eBay、Amazon、Etsyなど)、レビューサイト、SNSといった外部接点を持たなければ、AIのデータソースに入りません。自社ECだけでは不十分です。
第二に、情報を構造化することです。
スペック、用途、比較軸、カテゴリといった情報が整理されていなければ、AIは理解できません。
「こだわりの逸品です」といった表現は、人には響いてもAIには伝わらないのです。これについては、当社の過去記事で何度か書いていますので、そちらをご参照ください。
第三に、ストーリーをデータ化することです。
誰が作り、どの技術が使われ、何が他と違い、どんな場面で価値を発揮するのか。
感性や雰囲気ではなく、「説明可能な情報」に変換する必要があります。
そして最後に重要なのが、BtoCの実績です。
- 実際に売れている
- レビューがある
- 評価が蓄積されている
これらはすべて、AIにとっての「信頼データ」となります。
つまり、マーケットプレイスなどでのBtoC販売は単なる売上ではなく、AI時代における“信用のインフラ”を作る行為でもあるのです。今回のラグジュアリーECの話は、高級品市場の話にとどまりません。むしろ重要なのは、「選ばれ方のルールが変わった」という点です。
良い商品かどうかではなく、
AIに認識され、比較テーブルに載るかどうか。
この視点で見ると、日本製品には大きな可能性があります。本来はラグジュアリーに匹敵する価値を持ちながら、まだ十分に認識されていないだけだからです。
言い換えれば、
高級ブランドはすでにAIに載っている
日本製品はまだAIに存在していない
この差をどう埋めるか。それが、これからの越境ECにおける最大のテーマになるでしょう。

































