越境ECブログ

買い方の変化についていかないと厳しい越境EC

GMOグローバルECの横川です。

ECを長く運営している人ほど、ここ数年の変化を少し重たく感じ始めているかもしれません。以前であれば、ECで売るために重要なのは比較的分かりやすいものでした。

  • 検索で見つけてもらう。
  • 商品ページをしっかり作る。
  • 写真をきれいにする。
  • レビューを集める。
  • 広告を出す。
  • そして、購入しやすいサイトを作る。

もちろん、これらは今でも重要です。しかし、若い世代を中心に、そもそも「ECサイトに来てから商品を探す」という行動そのものが弱くなってきています。

英国の調査を紹介したRetail Technology Innovation Hubの記事によれば、若年層ではTikTok Shopなどのソーシャルコマース利用が急速に広がっており、商品を知る場所も、比較する場所も、欲しくなる場所も、徐々にSNSの中へ移動しているとしてきしています。
参考:Social commerce reshapes young consumers’ shopping journeys as e-commerce sites struggle to keep up

従来の買い物は、

検索
↓
ECサイト
↓
商品比較
↓
購入

という流れが中心でした。ところが現在は、

SNSで偶然商品を見る
↓
動画で使い方を見る
↓
他人の反応やレビューを見る
↓
気になって保存する
↓
何度か目にする
↓
欲しくなる
↓
そのまま購入する

という流れが強くなっています。ここで重要なのは、SNSが単なる「広告媒体」ではなくなっていることです。以前であれば、SNSはECサイトへ集客するための入口でした。

しかし今は、商品の発見、説明、実演、口コミ、人気の確認、購入までをSNSの中で完結できるようになっています。特にライブコマースでは、この傾向がさらに強くなります。

  • 実際に商品を使っているところを見る。
  • 視聴者が質問する。
  • 販売者やインフルエンサーが答える。
  • 他の人が次々に購入する。
  • 売り切れが近いことが表示される。

こうした要素が重なることで、「欲しい」という感情がその場で生まれます。

これは、日本のEC運営者にとってなかなか厳しい変化でもあります。なぜなら、これまで必要だった能力とは少し違う能力が求められるからです。

  • 商品登録ができる。
  • 広告運用ができる。
  • SEOが分かる。
  • ECサイトを更新できる。

これだけでは十分ではなくなりつつあります。

  • 動画をどう見せるか。
  • 誰に紹介してもらうか。
  • 短時間で商品の魅力をどう伝えるか。
  • ライブ配信でどんな説明をするか。
  • SNS上でどんな話題を作るか。

こうしたことまで考えなくてはならなくなっています。
「そこまでやらないとECはできないのか」と思う事業者が出てくるのも無理はありません。特に日本では、顔を出して商品を紹介することに抵抗を感じる人も少なくありません。毎日のように動画を撮り、SNSを更新し、ライブ配信まで行うという文化は、多くの中小企業にとってかなりハードルが高いでしょう。国内ECだけを考えるのであれば、必ずしもすべての企業がすぐ対応する必要はないかもしれません。

しかし、越境ECをするのであれば、この変化は避けて通れません。
東南アジアや台湾、中国などでは、すでにソーシャルコマースやライブコマースが買い物の一部として定着しています。欧米でもTikTok Shopをはじめ、SNSを起点とした購買行動は若年層を中心に広がっています。

つまり海外市場へ出るということは、単に「日本の商品を海外のECモールに出品する」ということではなくなっています。現地の消費者が、どこで商品を知り、何を見て欲しくなり、誰の意見を信用し、どこで購入するのか。その購買行動そのものを理解する必要があります。

ただし、すべてを自社でやる必要はありません。ここは重要です。
SNS時代になったからといって、日本のメーカーの社長が毎日TikTokに出演する必要はありません。

  • 現地のインフルエンサーを活用する。
  • ライブコマース事業者と組む。
  • 販売プラットフォームが抱えるクリエイターを利用する。
  • 動画制作を外部に任せる。

こうした方法でも十分対応できます。企業側に必要なのは、「自分たちですべてやる能力」というより、

  • どのチャネルを使うのか。
  • 誰と組むのか。
  • 何を伝えてもらうのか。
  • どの商品が動画向きなのか。

を判断する力です。そして、さらにこれからはAIも加わります。SNSでは人間が商品を発見します。

一方、ECサイトの商品情報は、AIが商品を理解し、比較し、推薦するための情報源になっていきます。
つまりこれからの越境ECでは、SNSで人の感情を動かす。そして、商品データでAIに正しく理解してもらう。

この両方が必要になってくる可能性があります。そう考えると、ECサイトの役割そのものも変わります。
以前のECサイトは「お客さんが商品を探しに来る店」でした。これからは、

  • SNS
  • 検索
  • インフルエンサー
  • ライブコマース
  • AI
  • ECモール

など、さまざまな入口から商品へたどり着くための「販売基盤」に近づいていくでしょう。日本のEC運営者にとっては、少々息苦しい時代かもしれません。

  • SEOを覚えたと思ったらSNS。
  • SNSを覚えたと思ったら動画。
  • 動画の次はライブコマース。
  • そして今度はAIです。

「次から次へと新しいものが出てきて、もうついていけない」という声が出ても不思議ではありません。しかし、越境ECとは本来、海外の消費者の買い方に合わせるビジネスです。日本で慣れ親しんだ売り方を、そのまま海外へ持っていくことではありません。海外の消費者の買い物が変われば、こちらも変わる必要があります。

すべての流行を追いかける必要はありません。ただし、

「自社ECさえ作れば売れる」
「海外モールに出品すれば売れる」

という時代ではなくなっていることだけは、理解しておいた方がよさそうです。越境ECでこれから求められるのは、ECサイトを運営する技術だけではありません。世界の消費者が、どこで商品を知り、どう納得し、どう買うのか。その変化を読み取り、自社に合った方法を選ぶ力です。越境ECとは、海外に商品を出すことではなく、海外の「買い方」に参加すること。これからは、そんな考え方がますます重要になっていくのでしょう。

Writer 横川 広幸

横川 広幸 取締役 越境ECコンサルタント eBayJAPAN創業時に法人営業、マーケティングに従事。eBayに連携した越境ECサイト “Tokyotrad” で日本の仏具を世界86カ国に販売。自らの越境EC成功体験を越境ECアドバイザーとして日本全国でセミナー講演や個別相談を行う。

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